第15回刑事弁護経験交流会ー公判前整理手続を通して刑事弁護を考えるー(9月10日午後・さっぽろ芸術文化の館)

下記の、函館でのシンポジウムに参加した後、札幌へ移動して、9月10日午後に、上記の会を見学してきました。刑事弁護経験交流会は、最近、見学に行くことが多くなっています。
事例報告の途中から会場に入ったのですが、発表者から、具体的な事件について、争点整理の在り方や、裁判所が弁護人による立証の必要性をなかなか理解してくれないなど、刑事事件で起きがちな問題点が指摘されつつ報告され、参考になりました。こうした、具体的なケースに関する報告は、聞いて考える機会を積み重ねることで、自分のバックグラウンドになるものです。
その後、パネルディスカッションが行われ、公判前整理手続における争点や証拠の整理の在り方などについて、現職の裁判官や検察官も参加して討議が行われました。
パネルディスカッションの討議を聴いていて感じたのは、現行の公判前整理手続は、受訴裁判所が自ら行うことになっているため、そういう立場で、無駄なことはしないといった観点にも照らしつつ、争点や証拠をぎりぎりに詰めて行く、ということになりやすい傾向にあると思いますが、これを、公判前整理手続は、別の裁判体が行う、ということにすれば、詰め方が、やや余裕を持った、被告人や弁護人がここは争点にしたい、立証したいという点をうまくくみ取るような(結果的には奏功しないようなことになっても)ものになるのではないか、ということでした。別の裁判体が審理するということになれば、あまりにも争点、証拠を切り詰めすぎると判断すべき対象が欠落してしまいかねないため、ある程度余裕を持って盛り込んでおく、ということになるでしょう(ただ、行き過ぎると、特に裁判員に対する負担になりますから自ずと限界はありますが)。
公判前整理手続には、予断排除原則との衝突の問題もありますが、そのような方法であれば予断排除原則との衝突も回避できるというメリットがあるように思います。
裁判官、検察官をやっていると、被告人、弁護人が、こんな馬鹿な、無駄な主張をして、と一蹴したい場面がよく出てきますが、被告人、弁護人(特に被告人)には、どうしてもここは主張、立証したい、ということがある場合が少なくなく、刑事裁判には、国家刑罰権行使にあたっての被告人の納得を得る場という機能もありますから、そういった側面も、今後、公判前整理手続制度を見直すにあたっては見落とせないでしょう。
いろいろな議論に接することができ、有益な参加となりました。