http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140312-00000562-san-soci
横田裁判長は1審の公判前整理手続きについて「判断の分かれ目を意識した争点整理を行わなかった」と指摘。公判では漫然と主張・立証が行われ「裁判員が法廷で見聞きしただけで理解できる審理計画だったか疑問に残る」とした。
私は、検事に任官し、その後、弁護士になって、トータルで、間もなく満25年になりますが、任官前の司法研修所時代を足せば、丸27年、刑事事実認定のポイントは何かについて、教育も受け検討もしてきていて、事件を見て一通り記録を読み関係者の話を聞けば、自ずと、何が争点になるかは大体把握できます。しかし、裁判員は、その事件のみに関わる一般の方ですから、予め、何が争点でありどこがポイントなのかを明確にしておかないと、どこに着目すべきかわからず、判断不能に陥りかねないでしょう。別のニュースによると、この事件は、通算で十数時間程度、証人尋問や被告人質問が行われたとのことであり、横田裁判官指摘のように「判断の分かれ目を意識した争点整理を行わなかった」状態での、それだけの尋問を聴いて、裁判員が判断する上での多大な困難に直面したことが推察されます。時間をかけ、関係者の労力を費やし、何のための裁判員裁判だったのか、ということにもなりかねないものがあります。
そのような事態を招かないためには、やはり、まずは、公判前整理手続を主宰する裁判所が、漫然と当事者に主張をさせっぱなしにするのではなく、「判断の分かれ目を意識した争点整理」を行うことが肝要であり、その後の訴訟においても、整理された争点を踏まえた、メリハリの効いた訴訟運営(例えば、尋問の際に、ここがポイントに関わると裁判官が判断すれば、そこを意識した介入尋問を差し挟む、といったことも考慮すべきでしょう)が必須だろうと思います。
そういった意味で、今後の教訓になる、しなければならない事件ではないかという印象を受けました。