裁判員裁判は“損”? 手続き多く勾留が長期化

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100316-00000063-san-soci

公判前整理手続きは通常、起訴の約1カ月後に開始。月1回ペースで数回行われてから公判日程が決まる。裁判員候補者には6週間前までに呼び出し状を発送するため、公判は早くても起訴から約2カ月半後になる。公判前整理手続きに時間がかかれば、その分初公判は遅れる。
大阪拘置所によると、被告の勾留期間が制度開始以降に延びていることを示す具体的なデータはないが、長期化の傾向は顕著になっている。

こうした状況を受け、最高検は1月、全国の検察に迅速な証拠開示を指示した。検察幹部は「スムーズに進めるためには、弁護人が分かりやすく証拠開示請求をしたり、裁判所が適切にリードしたりすることも不可欠」と話し、関係者の協力を訴えている。
だが、必ずしも関係者の足並みがそろっているわけではない。裁判員裁判を複数担当したある弁護士は「公判準備を急ぐことは被告の利益にならない」と反論する。
この弁護士は、起訴後2カ月余りで行われた全国初の裁判員裁判東京地裁)について「準備期間が短すぎ、十分な弁護活動ができなかった可能性がある」と指摘。「時間がかかっても納得のいく裁判にすべきだ。勾留が長びけば困るが、被告が保釈されていれば問題はない」と話している。

全国で、裁判員裁判対象事件が徐々に滞留しつつあるようですから、記事が指摘する「勾留の長期化」問題は、今後、さらに深刻になる可能性が高いでしょうね。
従来の否認事件の公判は、とりあえず第1回公判を通常のペースで入れておいて、検察官立証をできるところから始め、その間に弁護人が準備を行って、当初は証拠意見を留保したり不同意にしていたりしていた証拠も、準備が進む中で同意するなどして、徐々に争点が明確になり、最後には帳尻が合い、公判期間についても無用に長期化しないように済んでいる(無用に長期化することもありましたが)という面があって、それはそれでメリットもあったと思います。とりあえず公判が進行することで、裁判員裁判におけるように、公判前整理手続が先行して被告人が警察、拘置所で売れ残りの在庫のような状態になるということがなく、わかりやすさという点でもメリットがあったと言えるでしょう。
記事にある「被告が保釈されていれば問題はない」というどこかの弁護士の意見も、それはその通りなのですが、裁判員裁判対象事件の犯罪の重さや、保釈保証金が容易に調達できない場合が少なくないことを考えると、保釈の促進は必要ではあるものの、そう簡単には片付けられないのではないかと思います。
名案はありませんが、当面は、法曹三者マンパワーをできるだけ裁判員裁判に投入することで、滞留状態を解消へと向かわせ、勾留長期化を防止するしかないと思います。人はお金だけで動くわけではありませんが、お金というものはいろいろな問題を解決する上で大きく作用するものであり、裁判員裁判での国選弁護報酬を、事案の複雑困難さに応じて大きく増額することも、優秀な弁護士の確保につながり、検討する価値はあると思います。