刑訴規則27条1項但書にいう「特別の事情」があるとされる場合・3人を超える弁護人の数の許可につき刑訴規則27条1項但書にいう「特別の事情」があるとされた事例

最高裁第三小法廷平成24年5月10日決定(判例時報2160号144ページ)です。
刑訴法では、

第35条  裁判所は、裁判所の規則の定めるところにより、被告人又は被疑者の弁護人の数を制限することができる。但し、被告人の弁護人については、特別の事情のあるときに限る。

とされ、それを受けて刑訴規則では、被疑者の場合、被告人(規則26条1項で、特別の事情がある場合は裁判所が3人まで制限できるとする)よりも制限を強めて、27条1項で、

被疑者の弁護人の数は、各被疑者について三人を超えることができない。但し、当該被疑事件を取り扱う検察官又は司法警察員の所属の官公署の所在地を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所が特別の事情があるものと認めて許可をした場合は、この限りでない。

としています。本件では、この「特別の事情」があるかどうかが問題になり、地裁、高裁は否定したのに対し、特別抗告を受けた最高裁が肯定した、という流れになります。
最高裁は、

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20120620150223.pdf

刑訴規則27条1項ただし書に定める特別の事情については,被疑者弁護の意義を踏まえると,事案が複雑で,頻繁な接見の必要性が認められるなど,広範な弁護活動が求められ,3人を超える数の弁護人を選任する必要があり,かつ,それに伴う支障が想定されない場合には,これがあるものと解されるところ

と、「特別の事情」の意義を明らかにした上で、これを本件にあてはめて、

本件においては,税務申告書に架空の減価償却費用を計上するなどして多額の所得を秘匿したという事件につき,犯意,共謀等を争っている複雑な事案であること,申立人は被疑事件につき接見禁止中であり,弁護人による頻繁な接見の必要性があること,会社の従業員,税理士事務所職員ら多数の関係者が存在し,これらの者と弁護人が接触するなどの弁護活動も必要とされることなどの事情が認められ,上記のような支障も想定されないから,刑訴規則27条1項ただし書に定める特別の事情があるものというべきである。

として、地裁、高裁の判断は是認できないとしています。
単に、接見に支障をきたす、といった狭い見方ではなく、「広範な弁護活動」の中に、「会社の従業員,税理士事務所職員ら多数の関係者が存在し,これらの者と弁護人が接触するなどの弁護活動も必要とされること」といった事情も含めていて、最高裁が、被疑者弁護の意義(被疑者の権利を擁護し捜査を適正化するために重要な意義を持つと考えているのでしょう)に鑑み、特別の事情を、過度に制限的に捉えるべきではない、と考えていることがうかがえて、参考になります。
こうした判例も出ていることですから、捜査段階で3人を超える弁護人が必要である場合は、積極的に許可を求めてみるべき、ということも言えるように思います。