競馬の当たり馬券の払戻金が所得税法上の一時所得ではなく雑所得に当たるとされた事例・競馬の外れ馬券の購入代金について、雑所得である当たり馬券の払戻金から所得税法上の必要経費として控除することができるとされた事例

最高裁第三小法廷平成27年3月10日判決(判例時報2269号125頁)です。
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/934/084934_hanrei.pdf

最高裁は、「所得税法上,営利を目的とする継続的行為から生じた所得は,一時 所得ではなく雑所得に区分されるところ,営利を目的とする継続的行為から生じた 所得であるか否かは,文理に照らし,行為の期間,回数,頻度その他の態様,利益発生の規模,期間その他の状況等の事情を総合考慮して判断するのが相当である。」とした上で本件で問題となった所得は雑所得であるとし、その上で、必要経費性について、「本件においては,外れ馬券を含む一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有するのであるから,当たり馬券の購入代金の 費用だけでなく,外れ馬券を含む全ての馬券の購入代金の費用が当たり馬券の払戻 金という収入に対応するということができ,本件外れ馬券の購入代金は同法37条 1項の必要経費に当たると解するのが相当である。」という判断も示しています。
ただ、必要経費性については、大谷裁判官の補足意見で、「当たり馬券の払戻金は,当該当たり馬券によって発生し,外れ馬券はその発生に何ら関係するものでは ないから,検察官が主張するとおり,外れ馬券の購入代金は,単なる損失以上のも のではなく,払戻金とは対応関係にないといわざるを得ない。」と指摘していて、直ちには排斥しにくいものもあり、必要経費性についてはやや微妙なものがあったという印象を受けました。
私自身、脱税事件の捜査経験、弁護経験がともにありますが、特に刑事責任そのものについて影響するような税法の解釈については、税法上、これまでそのように解釈されてきたから、で片付けるのではなく、慎重に検討する必要性を、この判例を読んで改めて感じました。