http://mainichi.jp/select/jiken/news/20100527ddm041040133000c.html
都側は「任意聴取中の容疑者に弁護士との面会権を保障した規定はない」と主張したが、畠山裁判長は「面会権は刑事訴訟法が保障する弁護人依頼権に含まれる」と指摘。「任意聴取中でも、捜査機関は弁護士から面会の申し出があれば容疑者に伝え、容疑者が希望した場合は措置を講じるべきだ」と述べた。
判決によると、弁護士は09年4月、板橋署で覚せい剤取締法違反の疑いがあるとして任意聴取を受けていた容疑者への面会を申し出たが、署員は「今は会わせられない」などと拒絶した。
刑事訴訟法39条1項は、
身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(弁護士でない者にあつては、第31条第2項の許可があつた後に限る。)と立会人なくして接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる。
と規定していて、では身体の拘束を受けていない被疑者、被告人の接見についてはどうか、という問題が以前から議論されていますが、安冨・刑事訴訟法219頁でも論じられ、上記の記事にある判決でも指摘されているように、弁護人依頼権の一環として自由な接見交通も認められていると見るべきでしょう。
板橋警察署のおまわり程度では知るはずもないと思いますが、安冨219頁でも紹介されている福岡高判平成5年11月16日では、
被疑者の弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(以下「弁護人等」という。)は、当然のことながら、その弁護活動の一環として、何時でも自由に被疑者に面会することができる。その理は、被疑者が任意同行に引き続いて捜査機関から取調べを受けている場合においても、基本的に変わるところはないと解するのが相当であるが、弁護人等は、任意取調べ中の被疑者と直接連絡を取ることができないから、取調べに当たる捜査機関としては、弁護人等から右被疑者に対する面会の申出があった場合には、弁護人等と面会時間の調整が整うなど特段の事情がない限り、取調べを中断して、その旨を疑者に伝え、被疑者が面会を希望するときは、その実現のための措置を執るべきである。任意捜査の性格上、捜査機関が、社会通念上相当と認められる限度を超えて被疑者に対する右伝達を遅らせ又は伝達後被疑者の行動の自由に制約を加えたときは、当該捜査機関の行為は、弁護人等の弁護活動を阻害するものとして違法と評され、国家賠償法一条一項の規定による損害賠償の対象となるものと解される。
という判断を示しています。身柄不拘束とは言え、取調べ継続中に弁護人から面会の申し出があっても被疑者には知り得ないこともありますから、特段の事情がない限り「取調べを中断して、その旨を疑者に伝え、被疑者が面会を希望するときは、その実現のための措置を執るべき」とするのは至極妥当でしょう。なお、この事件での損害賠償認容額は5万円です。
こういった流れの中では、上記の記事にある判決は妥当なものと言えますが、認容額が10万円というのはいかにも少なく、捜査機関による違法行為の「やり得」を防止するため、この種の違法行為があった場合は、最低でも500万円程度の損害賠償は認めるようにすべきでしょう。