刑事確定訴訟記録法に基づく判決書の閲覧請求を不許可とした保管検察官の処分が同法4条2項4号及び5号の解釈適用を誤っているとされた事例

最高裁第三小法廷平成24年6月28日決定(判例時報2158号144ページ)です。
刑事確定訴訟記録法は、

第4条
1 保管検察官は、請求があつたときは、保管記録(刑事訴訟法第53条第1項の訴訟記録に限る。次項において同じ。)を閲覧させなければならない。ただし、同条第1項ただし書に規定する事由がある場合は、この限りでない。
2 保管検察官は、保管記録が刑事訴訟法第53条第3項に規定する事件のものである場合を除き、次に掲げる場合には、保管記録(第2号の場合にあつては、終局裁判の裁判書を除く。)を閲覧させないものとする。ただし、訴訟関係人又は閲覧につき正当な理由があると認められる者から閲覧の請求があつた場合については、この限りでない。
一  保管記録が弁論の公開を禁止した事件のものであるとき。
二  保管記録に係る被告事件が終結した後三年を経過したとき。
三  保管記録を閲覧させることが公の秩序又は善良の風俗を害することとなるおそれがあると認められるとき。
四  保管記録を閲覧させることが犯人の改善及び更生を著しく妨げることとなるおそれがあると認められるとき。
五  保管記録を閲覧させることが関係人の名誉又は生活の平穏を著しく害することとなるおそれがあると認められるとき。
六  保管記録を閲覧させることが裁判員、補充裁判員、選任予定裁判員又は裁判員候補者の個人を特定させることとなるおそれがあると認められるとき。
(3項以下略)

と規定していますが、申立人である弁護士が、民事訴訟準備のため、刑事の被告事件の1審判決書について「プライバシー部分を除く」と付記して閲覧請求したものを、保管検察官が上記の4号、5号に該当するとして全部不許可にし、準抗告審も検察官の措置を是認して、申立人が特別抗告を申し立てたのに対し、最高裁は、適法な抗告理由にはあたらないとしたものの、判決書は国家刑罰権の行使に関して裁判所の判断を示した重要な記録として裁判の公正担保の目的との関係においても一般の閲覧に供する必要姓が高いことを指摘し、民事裁判においてその内容が明らかにされ4号、5号の閲覧制限事由に当たる可能性がないではないが一般の閲覧に供する必要姓の高さに鑑みるとその全部の閲覧を不許可とすべきではなく、保管検察官において、元々「プライバシー部分を除く」として閲覧請求していた申立人に限定の趣旨を確認した上で閲覧の範囲を検討し閲覧を許可することができたはずであった、として、原決定と保管検察官の閲覧不許可処分を取り消しています。
上記の4号、5号が、弊害の「著しさ」を要求していることや、最高裁が指摘する、判決書が一般の閲覧に供される必要姓の高さに照らせば、妥当な判断と考えられますが、保管検察官の対応や、閲覧を求める側の請求の方法上、参考になる事例と言えると思います。