妄想型統合失調症による幻覚妄想状態の中で幻聴、妄想等に基づいて行った行為が「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」2条2項の対象行為に該当するかどうかの判断方法(最高裁第三小法廷平成20年6月18日決定・判例時報2097号158頁)

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080620142458.pdf

対象者の行為が対象行為に該当するかどうかの判断は,対象者が妄想型統合失調症による幻覚妄想状態の中で幻聴,妄想等に基づいて行為を行った本件のような場合,対象者が幻聴,妄想等により認識した内容に基づいて行うべきでなく,対象者の行為を当時の状況の下で外形的,客観的に考察し,心神喪失の状態にない者が同じ行為を行ったとすれば,主観的要素を含め,対象行為を犯したと評価することができる行為であると認められるかどうかの観点から行うべきであり,これが肯定されるときは,対象者は対象行為を行ったと認定することができると解するのが相当である。なぜなら,上記のような幻聴,妄想等により対象者が認識した内容に基づいて対象行為の該当性を判断するとすれば,医療観察法による医療が最も必要とされる症状の重い者の行為が,主観的要素の点で対象行為該当性を欠くこととなりかねず,医療観察法の目的に反することとなるからである。

確かに、統合失調症の症状が重く治療の必要が強いほど、犯罪成立の主観的要件は満たしにくくなり、そうなればばなるほど医療観察法の対象外になって行く、ということになるのは背理ですから、この判断は妥当でしょうね。
医療観察法対象事件の付添人になった際は、こうした判例があることを踏まえつつ対応する必要があります。

追記:

判例評論650号47頁(判例時報2175号161頁)飯野海彦