第1審裁判所が犯罪の証明がないことを理由として無罪の言渡しをした場合と控訴審における勾留(最高裁第二小法廷平成23年10月5日決定・判例時報2135号143頁)

1審で無罪になった被告人について、検察官控訴が申し立てられ、高裁が職権を発動して勾留したことにつき、異議申立が棄却され、特別抗告が申し立てられたものを最高裁が棄却した、というものです。

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20111007094042.pdf

最高裁は、このような場合について、

第1審裁判所が犯罪の証明がないことを理由として無罪の言渡しをした場合であっても,控訴審裁判所は,第1審裁判所の判決の内容,取り分け無罪とした理由及び関係証拠を検討した結果,なお罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があり,かつ,刑訴法345条の趣旨及び控訴審が事後審査審であることを考慮しても,勾留の理由及び必要性が認められるときは,その審理の段階を問わず,被告人を勾留することができるというべきである

としていて、判例時報のコメントで指摘されているように、嫌疑の程度、勾留の理由及び必要性が、無罪判決があったことを踏まえつつ慎重に検討しても、なお例外的に肯定される場合に勾留が許容される、ということを明らかにした点に意義があるということになるでしょう。
弁護人が、こうしたケースで勾留に反対する場合は、上記のような例外には該当しない、勾留すべきではないケースである、ということを、判例を踏まえつつ指摘する必要があることに留意すべきということになります。