郵政事業会社が転居届に関わる情報について負う守秘義務が弁護士法23条の2に基づく照会に対する報告義務に劣後し、報告を拒絶したことに正当な理由はないが、照会の権利・利益の主体は個々の依頼者ではないから、不法行為に基づく損害賠償を請求することができないとされた事例(東京高判平成22年9月29日・控訴棄却確定)

判例時報2105号11頁以下に掲載されていました。
上記のような弁護士会照会に対し郵政事業会社が「信書の秘密」を理由に拒絶したことについて、判決では、住居所に関する照会の限度で、報告義務が守秘義務に優越すると判断し、この種の信書、通信に関する弁護士会照会に関する回答の在り方として、参考になる判断を示しています。
また、上記のような不法行為による損害賠償請求については、弁護士やその依頼者を損害の主体と認める裁判例と、認めない裁判例の双方がある中、本判決では否定説に立っていて(判例時報のコメントでは積極説はいずれも地裁判決で、否定説の中の1つが大阪高判)、この種の訴訟を提起しようとする場合、十分に検討しておくべき判決であると言えるでしょう。