「予見できなければ免責」=親の監督責任で初判断―少年のボールよけ転倒・最高裁

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150409-00000062-jij-soci

最高裁第1小法廷(山浦善樹裁判長)は9日、「通常、危険とはみられない行為で損害を生じさせた場合、結果を具体的に予見できたなどの事情がない限り、監督義務を怠ったとは言えない」との初判断を示した。

民法714条では、

1 前2条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2 監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者も、前項の責任を負う。

と規定され、上記の「監督義務」はかなり広く捉えられてきた経緯がありました。しかし、それは、被害者救済には資するものであっても直接の加害者ではない監督者に酷な結果になる場合も少なくなく、最高裁は、上記のような判断を示すことで、監督義務に合理的制限を加えて、バランスを取ったという評価が可能でしょう。
上記の記事では、

判決は、子どもだけでなく、責任能力を欠く認知症患者らへの監督責任をめぐる訴訟にも影響する可能性がある。

とあって、これはなかなか良い指摘で、以前、

<特集ワイド>認知症事故と損害賠償 介護現場に衝撃の判決
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20131016#1381925840

こういった判決が出る背景には、改正前の精神保健福祉法で、監督義務者に代わる保護義務者について「保護者は、精神障害者に治療を受けさせるとともに、精神障害者が自身を傷つけ又は他人に害を及ぼさないように監督し、かつ、精神障害者の財産上の利益を保護しなければならない」と規定され、「自傷他害防止監督義務」が含まれていたところ、そのような保護者が民法714条の法定監督義務者にあたるかについて、判例では、法が保護者の自傷他害防止監督義務を明定していること、保護者には医療保護入院の同意権など一定の範囲で精神障害者自傷他害を防止するための実質的な手段が与えられていることを根拠に保護者(扶養義務者も含め)の法定監督義務者性を肯定し損害賠償を命じていて、そのような考え方が通説で、これは、平成11年に精神保健福祉法が改正され自傷他害防止監督義務が削除された後も、裁判例では、改正によってもそのような保護者の民法714条責任自体は否定されない、とされているという事情が存在するようです。

とコメントした、その714条の責任自体に最高裁が合理的制限を加える流れになってきていますから、今後、精神障害者についても、保護者の責任に合理的な制限を加えるという流れになってくる可能性はあると思います。
その意味でも、今後の裁判例の動向には注意が必要でしょう。