裁判員制度による審理裁判を受けるか否かについての選択権と憲法32条、37条

最高裁第二小法廷平成24年1月13日判決(判例時報2143号144ページ)です。
最高裁は、既に平成23年に、裁判員制度は合憲であるという判断を示していますが、本判決で、被告人に裁判員裁判を受けるか否かの選択権が与えられていなくても、刑事司法における国民の司法参加を許容する憲法の下、適正な刑事裁判の内容は、憲法が定めるそのための諸原則が確保されている限り立法政策に委ねられ、裁判員制度ではそういった諸原則が確保されているから合憲である、と判断しています。
判例時報のコメントでは、従来、戦前の陪審制採用当時から戦後にかけて、被告人に選択権を与えれば合憲性を確保できる、その点に関する疑義は解消される、という根強い意見が存在していたことが紹介されていて参考になります。この点は「裁判官」による裁判を受けることをどこまで重視するか、権利と見るかにかかっているのではないかと思われますが、旧憲法が「裁判官」による裁判を受ける権利が保障されていたのに対し、現行憲法では、「裁判所」による裁判を受ける権利が保障されていて、裁判員制度を合憲と見る以上、そのような裁判所(裁判員を含む)による裁判を受けることについて、被告人に選択権を与えなくても合憲である、というのが、おそらく論理的帰結にはなるでしょう。ただ、戦前から脈々と、選択権を認めるべきだ、という意見が根強く主張されてきたことは、今後の裁判員制度の見直しの上で、重視されるべきではないか(例えば一定の罪について選択権を与えるなど)という気がします。