刑法(平成19年法律第54号による改正前のもの)208条の2第2項後段にいう赤色信号を「殊更に無視し」の意義(最高裁第一小法廷平成20年10月16日決定)

判例時報2039号144ページ以下に掲載されていましたが、これについては、以前、本ブログで、

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20081019#1224345441

とコメントしたことがあります。
また、その後、この種の事故が問題になったケースで、危険運転致死罪適用が見送られたことについて、

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20090623#1245757647

とコメントしたことがあります。
判例時報のコメントでは、

赤色信号についての認識が未必的であったとしても、そのような未必的な認識の赤色信号におよそ従う意思のない場合には、未必の故意ではなく、確定的故意があるといえるからである

としていて、確かに、理屈としてはそうなるのかもしれませんが、実務上、上記のような「赤色信号についての認識は未必的」「しかし赤色信号におよそ従う意思がなく確定的故意」かどうかは、専ら、被疑者、被告人の供述に依存しないと認定が極めて困難で、今後、この問題点が、危険運転致死罪の場合は裁判員裁判の中で問題になることを考えると、裁判員を含んだ裁判体による事実認定上、かなり難しい認定になる可能性は極めて高いように思われます。