控訴されているようですが、この種の事案で、雑誌発行社等の責任が認められた事例は珍しいな、と思い、目が留まりました。
判例時報のコメントでは、最判平成元年9月19日が、この種事案において不法行為が成立する要件として、①注意義務の発生(広告内容の真実性に疑念を抱くべき特別の事情があって、読者らに不測の損害を及ぼすことを予見し、または予見し得た場合)②注意義務の違反(真実性の調査確認をして虚偽広告を読者らに提供してはならない)を挙げ、「最判以後、公刊されているものでは、これを認めた事例は見当たらないようである。」としていますが、私も、過去に調べた際、責任肯定事例は見当たらなかった記憶で、その意味では、確定していないとはいえ、珍しい事例と言えそうです。
判例時報のコメントでも指摘されているように、本件では、「広告の対象となった商品や役務の存在自体に疑念があったという特殊性」があり、そこが、責任肯定へつながったということは言えると思いますが、この種の広告が、媒体によっては当たり前のように掲載されているケースもあって、出版社や広告代理店としては、注意をしておかないと、思いがけない責任を問われかねないということは言えると思います。
追記:
東京地判平成22年2月17日(判例時報2079号52頁)
上記の「特別の事情」の否定例