明石市花火大会歩道橋事故・上告審決定(最高裁第一小法廷平成22年5月31日)

雑踏警備に関し現場で警察官を指揮する立場にあった警察署地域官及び現場で警備員を統括する立場にあった警備会社支社長に、業務上過失致死傷罪が成立するという最高裁の判断が示されたものです。判例時報2083頁159頁以下に掲載されていました。
一通り読んでみましたが、有罪となった認定事実自体は、検察官が当日の事故発生直前の過失に絞って(直近過失)起訴したことから、そこに限定されたものになっているものの、職権判断の中で、事前の警備計画作成段階において十分に危険性が予見できたことが、複数の根拠を挙げて指摘されていることが注目されるという印象を受けました。こういった点は、現在、検察審査会の起訴相当議決により強制起訴となって神戸地裁に係属中の事件にも、相応の影響を及ぼすことが予想されます。
判例時報のコメントで、過去の同種起訴事例が少ないことや、その中に弥彦神社事件(最決昭和42年5月25日判例時報485号66頁)があるものの、雑踏警備の在り方等が現在と大きく異なり先例としての参照価値が大きいとは言えないことも指摘されていて、その意味での、本決定の重要性は、確かに感じられるものがありました。

追記(平成23年8月1日)

土本武司判例評論630号33頁(判例時報2114号179頁)

「事前の警備体制の確立は、その重要な注意義務として位置づけるべきであったと思われる。」としつつ、強制起訴については、過失犯の共同正犯を否定する立場から、公訴時効は停止しているとは言えず消極説に従って処理されるべきであったとする。