警察署の塀の上部に上がった行為について建造物侵入罪の成立が認められた事例

最高裁第一小法廷平成21年7月13日決定で、本ブログでも、以前、

塀の上は建物にあたる? 最高裁、「建造物の一部」と初判断
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20090716#1247672342

とコメントしたことがありますが、判例時報2095号154頁以下に掲載されていました。
判例時報のコメントでも指摘されているように、1審、2審が、問題となった行為について、囲繞地(平たく言うと、建造物の周囲の敷地)に含まれるかどうかという観点で検討し、1審は犯罪成立を否定、2審は肯定したのに対し、最高裁は、塀自体を、工作物であり建造物の一部であると見て、有罪という判断を導いています。
決定では、塀の構造や性質(堅固なもので外部からの干渉を排除する作用を持つなど)を認定した上で、上記のような判断に至っており、それを見る限り、特に違和感は感じませんが、あくまで具体的事例に即した判断であり、塀自体が堅固な構造を持っていないとか、外部と内部を明確に区別しておらずそこへの到達が「侵入」とまでは見難いなど、事案によっては別の判断もあり得ることも想定されているのではないかと思われ、安易、過度な一般化は禁物という印象は受けました。
この種の事案の処理にあたっては、やはり、具体的な状況や行為者の主観面(動機、目的、故意など)を慎重に見極める必要がありそうです。

追記:判例評論646号43頁(判例時報2163号189頁)関哲夫