保釈請求に関する準抗告決定(原裁判取消、保釈許可)に対する検察官からの特別抗告が棄却された事例

最高裁第二小法廷平成22年7月2日決定で、判例時報2091号114頁以下に掲載されていました。最高裁は、検察官の特別抗告を棄却したものの、

なお、所論にかんがみ職権により調査すると、裁量により保釈を許可した原決定には、本件勾留に係る公訴事実とされた犯罪事実の性質等に照らせば、所論が指摘するような問題点もないとはいえないが、いまだ刑訴法411条を準用すべきものとまでは認められない。

という判断を示し、判例時報のコメント(最高裁内部の影の声?)では、保釈の運用について、要件をより具体的、実質的に判断し特に裁判員裁判での弾力的な運用を提唱する動向も紹介しつつ、「本決定は、原決定に問題点があることを指摘して裁量保釈の際に考慮すべき点について注意喚起しつつも、このような実務の動向等にも配慮し、運用が変化を見せている中での特別抗告審の介入を控えたものとの見方もできるように思われる。」としています。
問題となった事案は、刃物様のものを使った強盗致傷等の事案で、従来の保釈実務に照らせば到底保釈が認められなかったカテゴリーのもので、こうした事案について、最高裁が上記のような微妙な言い回しをし、判例時報のコメントでも上記のような微妙な評価されていることは、今後の保釈実務に影響し、この種の事案では、従来の基準を踏襲して保釈が認められない方向で処理されることになる可能性が高そうです。