他人所有の建物を同人のために預かり保管していた者が、金銭的利益を得ようとして、同建物の電磁的記録である登記記録に不実の抵当権設定仮登記を了したことにつき、電磁的公正証書原本不実記録罪及び同供用罪とともに、横領罪が成立するとされた事例(最決平成21年3月26日)

判例時報2041号144ページ以下に掲載されていました。
弁護人は、上告趣意書で種々主張する中で、「不実」記録、供用といった行為が横領にあたるというのは自己矛盾である、という主張をしたようですが、最高裁(第二小法廷)は、「不法領得の意思を実現する行為として十分」として、横領罪成立を認めた原判断を是認しています。
古い判例で、虚偽契約を締結しただけでは処分、領得したとは言えず横領罪は成立しないとしたものがあることが、判例時報のコメントで紹介されていますが、契約にとどまっているだけの場合と、現実に、電磁的記録上、不実の記録がされその用に供されている場合とでは、やはり後者のほうが不法領得意思発言の程度が強く、最高裁の決定に、特に違和感は感じられませんでした。事例判例ではありますが、参考になる事例ということは言えそうです。