パチスロ店内で、パチスロ機から不正な方法によりメダルを窃取した者の共同正犯である者が、犯行を隠ぺいする目的でその隣のパチスロ機において自ら通常の方法により遊戯した場合、①通常の遊戯方法により所得したメダルについての窃盗罪の成否、②窃取した財物と窃取したとはいえない財物とが混在している場合における窃盗罪の成立範囲

最高裁第一小法廷平成21年6月29日決定で、判例時報2071号159頁以下に掲載されていました。上記①については消極(窃盗罪不成立)、②については窃取したものについてのみ窃盗罪が成立するという判断が示されています。
判例時報のコメントでも指摘されていますが、平成19年に、体感器を用いてパチスロ機から不正にメダルを取得した事案について、最高裁が窃盗罪が成立するという判断を示していて、その場合は、体感器操作によるものかどうかを問わず、管理者の意思に反する占有侵害という点が重視され、メダル全体について窃盗罪が成立するとされていました。それに対し本件で最高裁は、いわゆるゴト行為によらず「被害店舗が容認している通常の遊戯方法により」習得したメダルについては窃盗罪は成立しないものとし、混在については、窃取したものに限られる(混在した中の一部にとどまる)としています。
混在している中の一部について窃盗罪が成立する場合、公訴事実や罪となるべき事実の記載方法は、判例時報のコメントが指摘するように、工夫する必要があるでしょう。訴因の特定という問題にも関わりますが、混在しているものの中の「相当数」等、できる限り特定するべきであり、かつ、それで足りるということになると思います。
こういった事案は、実務上、よく見受けられるだけに、今後、参考になると思われる判例です。