法科大学院いろいろ。/ 新司法修習の光と影

http://puni.at.webry.info/200803/article_12.html
http://puni.at.webry.info/200803/article_10.html

いずれも、なかなかおもしろいエントリーですね。中堅以上の現役弁護士の中の、この問題に関するよくある見方が出ているように思います。
以前にも本ブログでコメントしたこともありますが、法律初学者が、3年間で司法試験合格レベルにまで達するというのは、そもそもかなり難しいことです。なぜなら、かく言う私がそうだったからです。
私の場合、広島の、全国的なレベルから言うと冴えない高校で学び(広島では有名な伝統高ですが)、一浪して何とか早稲田大学法学部に入り(東大、京大等にはとても入れず)、大学での成績も中程度で、元々頭も良くない平均的な日本人で、この問題のサンプルにはなり得ると思いますが、そういう私が、大学入学時から法律の勉強をはじめ、約3年7か月後の大学4年時の10月に司法試験に合格するまでは、無理に無理を重ねていて、あの生活を二度と再びしたいとは思いませんし、また、やろうとしてもできないと思います。身柄は拘束されていないものの、懲役4年の刑を受けて受刑し、3年7か月で仮釈放になったようなものではないか、という気も、いまだに感覚的にはしています。
なぜ、平均的な能力しかない私が、そこまでこぎつけられたかと言えば、頭はあまり良くないもののかなり真面目に取り組み短期間に集中的に勉強したことと、「運」があったことでしょう。古今東西の戦史を見るとわかりますが、人間の力ではどうしようもない運命のようなものが勝敗を左右した例は数多くあります。
何とか司法試験には合格したものの、物を知らないという点ではひどい状態で司法研修所に入ってしまい、当初はかなり苦労し、また、司法研修所の教官にも迷惑をかけたと思っています。修習期間が2年間あってそれだけ勉強ができたから良かったようなものの、修習期間が1年程度しかなければ、それこそ大変なことになっていたと思います。
現在の法科大学院制度の制度設計では、法科大学院のカリキュラムの中で、従来の司法研修所前期(実務修習に入る前)の教育は取り込んで済ませてもらうことになっているようですが、そもそも物理的に無理な話で、そういうことを考えた人は、東大生など元々の能力が非常に優れている人々を想定していたか、法律の学習やそれにかかる手間暇といったことを現実のものとしてではなく机上の空論として考えていたのでしょう。多くを占める、私のような平均的な能力しかない日本人が、法律学習をスタートして3年で前期修習終了レベルにまで達するのは至難の業であり、ほとんど不可能と言っても過言ではないと思います。
元々、間違って設計された制度の中で、大金を投じさせられ無理な勉強をさせられる人々こそ、迷惑千万であり、一日も早く、この間違いが是正されなければならないでしょう。