裁判員の参加する刑事裁判に関する法律35条1項の異議の申立てと裁判員等選任手続の停止

最高裁第一小法廷平成25年3月15日決定(判例時報2184号151ページ)です。
自分自身の整理のために、先に、問題となる条文を挙げておくと、裁判員法で

(異議の申立て)
第35条
1  前条第4項の請求を却下する決定に対しては、対象事件が係属する地方裁判所に異議の申立てをすることができる。
2  前項の異議の申立ては、当該裁判員候補者について第37条第1項又は第2項の規定により裁判員又は補充裁判員に選任する決定がされるまでに、原裁判所に対し、申立書を差し出し、又は裁判員等選任手続において口頭で申立ての趣旨及び理由を明らかにすることによりしなければならない。
3  第1項の異議の申立てを受けた地方裁判所は、合議体で決定をしなければならない。
4  第1項の異議の申立てに関しては、即時抗告に関する刑事訴訟法の規定を準用する。この場合において、同法第423条第2項中「受け取つた日から3日」とあるのは、「受け取り又は口頭による申立てがあつた時から24時間」と読み替えるものとする。

とされ、裁判員に関する理由のある不選任決定請求却下については、刑事訴訟法の即時抗告に関する規定が準用されることになってます。
刑事訴訟法の即時抗告については、

第425条  即時抗告の提起期間内及びその申立があつたときは、裁判の執行は、停止される。

とされていて、裁判員選任手続は停止されるべきであったのに停止されなかったのは違法ではないか、が問題となったものでした。最高裁は、「裁判員選任手続の性質上、即時抗告の執行停止の効力に関する刑訴法425条は準用されず」として、手続は違法ではなかった、という判断を示しています。また、異議申立ての対象になった裁判員候補者が選任されなかった場合は、不選任決定の請求を却下する決定を取り消す実益が失われ異議の申立ては法律上の利益を欠く、という判断も示しています。
このような、性質上、即時抗告の執行停止の効力に関する規定が準用されない、という手法は、判例時報のコメントによれば、、裁判官忌避申立ての簡易却下決定に対する即時抗告についても判例が採用しているもので、裁判員法の立法当時から、立法担当者は、その性質上(裁判員選任手続が停止されると支障が多大なものになる)、執行停止規定は準用されないと解していたとのことで、裁判員裁判における重要な手続において、最高裁が明確な判断を示したことは、今後の実務上に指針になるものと思われます。