日本刑法学会第87回大会(学会創設60年記念大会)

今年は、明治大学駿河台)での開催で、昨日は朝から夜までドラマの撮影に立ち会っていて、今日はさすがに午前中から参加する元気さがなく、午後の西原春夫・元早稲田大學総長の講演だけ聴きに行きました。
駿河台付近へ行くのは、振り返ってみると、4、5年くらい前に、親戚の結婚式で山の上ホテルへ行って以来ではないかと思われ、明治大学の建物が目を見張るほど立派で、しがない弁護士には威圧的にも感じられて、圧倒される思いでした。
西原先生は、私が早稲田大学法学部で学んでいた頃は総長の要職にあり、講義を持っておられなくて聴けませんでしたが、今になっても残念です。わずかに話を聴く機会があった際のことは、以前、本ブログでも

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20070202#1170374873

と触れたことがあります。話の中身だけでなく話術も巧みな方という印象を以前から持っていますが、本日の講演(テーマは「「刑法典100年とこれからの刑法学」 )も分かりやすく、硬い内容ではあるものの、飽きが来なくて、実務的な観点からも参考になるものでした。
西原先生の講演の中で、特に印象的であったのは、シンプルに出来ている日本の刑法典を枯山水にたとえ、侘び、寂びや簡素なものを尊ぶ日本の伝統文化に根ざしつつ、それを補ってきたのが判例であることや、従来の刑法学の中で行われてきた判例研究が十分なものとは言えず、今後は判例研究をより活性化し、立法に対しても影響力を及ぼせるようにしなければならない、といったことでした。また、責任主義という観点で見た場合、最近の刑事司法では、責任主義ということがないがしろにされつつあるのではないか(厳罰化等を指していると思われますが)といった危惧も表明されていて、私が大学生の頃に話を聞いていた西原先生と何ら変わりがなく、まったく衰えというものを感じませんでした。
自分も、西原先生の足元にも及ばないものの、まだまだ頑張らなければならないと思い、その意味でも有益な講演でした。