検事はその時

検事はその時

検事はその時

著者は、関西系の検事で、検事長まで上り詰めた人ですが、検事の、特に、関西系の検事の鋭さ、緻密さがよく出ていて、これから検事になろうとしている人や、若手の検事、検事の発想が知りたい弁護士等にとって、読めばかなり参考になる1冊ではないかと思います。
私は、平成2年から平成5年まで、徳島地検にいましたが、徳島地検は、関西系の検事が多くいるところで、まだ私自身、若く、かつ、今どころではなく貪欲にいろいろなことを吸収しようとしていた時期でしたから、関西系の検事の感覚には、学ぶところが多々ありました。現在の大阪地検次席検事は、当時、徳島地検の3席検事でしたが、よく、執務室でビールを飲ませてもらいながら、いろいろな話を聞かせてもらい、自分自身の未熟さを感じつつ、参考になる話を聞いたな、と実感していたものでした。
ある時、当時の次席検事(後に大阪地検特捜部長を務めた人)に、そういった緻密さの理由を聞いたところ、「関西系の裁判官は、東京のほうの裁判官とは違って、検察庁の起訴をなかなか認めてくれない。量刑も軽い。だから、表面的な捜査では駄目で、徹底的に真相を解明して他の認定ができないくらいに固めないといけない。」ということを聞かされ、なるほど、そういうものなんだと納得したことがありました。私は、結局、途中で検察庁からドロップアウトしてしまい、そういった教育を受けながらもそれを検察実務に生かすことができませんでしたが、若い頃に、そういった厳しい感覚、物事の見方といったことを学べたことは幸運であったと、振り返って思います。その一端を垣間見ることができるのが、上記の本と言ってもよいのではないかというのが率直な感想です。