日本刑法学会 2007年度東京部会

本日午前中から、市ヶ谷の法政大学で行われていて、現在、雨の中、やや寒々とした教室内で、東京地裁の合田悦三裁判官が、裁判員制度やその運用について、機関銃のように語るのを聞いているところです。
感想は、すべてのプログラムが終わった後に、若干、本ブログで述べておきたいと考えています。

追記:

プログラムの内容は(敬称略)、

午前中

講演 「司法制度改革と刑事司法」 松尾邦弘(前検事総長

午後

実行委員会企画 「刑事司法制度改革の現状と課題」 司会・伊東研祐(慶應義塾大学

1 「公的弁護制度(特に被疑者弁護)の実施状況と問題点・課題」 木下信行(東京弁護士会
2 「即決裁判手続と量刑の適正確保」 只木誠(中央大学
3 「裁判員に対する刑事裁判の基本原則、事件の争点、実体法上の法律概念等の情報伝達」 合田悦三(東京地方裁判所
4 「修復的司法の観点からみた裁判員制度被害者参加制度」 高橋則夫(早稲田大学

といったものでした。
松尾前検事総長の講演では、国の「かたち」の転換と刑事司法の役割の再構築、が強調されていて、そういった、あるべき国のかたち、姿に反するような犯罪に対しては、従来のように、形式犯だから、利得がないから(少ないから)、といった理由で寛刑に処すのではなく、実刑を含む厳しい処罰で臨むべきである、ということが強調されていました。
こういった松尾氏の考え方(おそらく、当分の間、検察庁内でも主流を占める可能性が高い)は、最近出た

市場と法

市場と法

でも紹介されていますが、今後の、特に経済犯罪、市場犯罪の摘発動向や量刑を見て行く上で、必ずわきまえておくべき要素であり、そのためには、とりあえず、上記の本を買って読んで手元に置いておく、ということが、お金もかからず(2000円余りで済み)、効果も期待できるように思いました。
午後の企画では、各論者からの講演の後、会場との間の質疑応答が行われ、台風接近のため予定よりも早めに切り上げられてしまったのは残念でしたが、日暮れて道遠し、といった感のある刑事司法制度改革の種々の問題点が具体的に指摘されていて、参考になりました。
特に、これは本当に大変なことだな、と感じたのは、裁判員制度でした。模擬裁判をやってみると、「裁判」ということ、それ自体をフォローできない裁判員が続出している、とのことで、死刑を含む重刑を宣告する可能性を常に持つ裁判に裁判員が関与した際に、どのようなことが起きるか、を考えると、かなり憂慮されるものがあるように思いました。裁判所は、しがない弁護士である私のように憂慮しているだけでは済まないので、かなり奮闘努力していることが、合田氏の講演からよくわかりました。