正当防衛に当たる暴行及びこれと時間的、場所的に連続して行われた暴行について、両暴行を全体的に考察して一個の過剰防衛の成立を認めることはできないとされた事例(最高裁平成20年6月25日決定・判例時報2009号149ページ)

事案の内容は省きますが、要するに、急迫不正の侵害行為が止んだ後に、さらに暴行を加えた場合、止む前の暴行と止んだ後の暴行を、どこまで一体として捉えるべきか、捉えるべきではないか、ということについて、具体的な事案の中ではあるものの、最高裁が判断を示した、というものです。
実務上、実際に正当防衛が問題となる事例では、生身の人間同士の激しい争いですから、上記のような一体性を肯定すべきなのか、否定すべきなのか、迷うケースが少なくありません。その意味で、一般化できるような基準を提示したりはしていないものの、一体性を判断する切り口のようなものを最高裁が示した、という意味で、今後の参考になりそうな気がしました。判例時報のコメント欄で紹介されている参考文献も、今後の同種事件で参考になりそうです。

追記(平成21年6月28日):

林幹人「量的過剰について」(判例時報2038号14ページ以下)

急迫不正の侵害に対する反撃として複数の暴行を加えた場合において、単独で評価すれば防衛手段としての相当性が認められる当初の暴行のみから傷害が生じたとしても、一個の過剰防衛としての傷害罪が成立するとされた事例(最高裁第一小法廷平成21年2月24日決定)
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20090628#1246156563

との関係も含め、分析、検討されています。