医師としての知識、経験に基づく診断を含む医学的判断を内容とする鑑定を命じられた医師がその過程で知り得た人の秘密を正当な理由なく漏らす行為と秘密漏示罪の成否

最高裁第二小法廷平成24年2月13日決定(判例時報2156号141ページ)です。
家庭裁判所から鑑定を命じられた医師が、鑑定資料中にあった少年らの供述調書等の鑑定資料や鑑定結果を記載した書面を第三者に閲覧させて秘密を洩らした、という事案ですが、最高裁は、

1 鑑定は、医師がその業務として行ったもので、その過程で知り得た人の秘密を漏らす行為は秘密漏示罪に該当する
2「人の秘密」には、鑑定対象者本人の秘密のほか、鑑定を行う家庭で知り得た鑑定対象者本人以外の者の秘密も含まれる
3 これらの秘密を漏示された者は、被害者として告訴権を有する

という判断を示しています。
判例時報のコメントでも指摘されているように、従来の解釈では、秘密漏示罪の「秘密」について、医師等に業務上の取り扱いを託した「本人」であるという考え方もあったとのことで(それでは狭すぎるというのが常識的な解釈でしょう)、その点も含め明確にした本判例の意義は大きいと感じました。