覚せい剤:海上回収失敗は密輸予備罪 最高裁判決

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20080305#1204673813

でコメントしましたが、判例時報2003号159ページ以下に掲載されていました。
上記のエントリーでもコメントしたように、実行の着手をどこで認定するかは、刑事責任に大きく影響するだけに重要な問題になりやすい面がありますが、具体的な状況の下で認定するしかなく、本件でも、事実関係を詳細に述べ、「以上の事実関係に照らせば、本件においては、」とした上で、

回収担当者が覚せい剤をその実力的支配内に置いていないばかりか、その可能性も乏しく、覚せい剤が陸揚げされる客観的な危険性が発生したとはいえないから、

として、実行の着手が否定されています。判例時報のコメントにあるように、似たような事例であっても、上記のような点が肯定されるような事実関係にあれば、実行の着手が認定される余地はあり、「この種の事案では実行の着手は認定されない」と即断するのは危険でしょう。
実行の着手とは何か、ということを考える上でも、参考になる事例という印象を受けます。