「訴因変更でも、刑訴法254条1項に準じ、公訴時効の進行が停止するとした最高裁判決」

http://d.hatena.ne.jp/okaguchik/20061125/p10

ボツネタで紹介されていましたが、かなり重要な判例ではないかと思います。
今、手元に資料がないので、記憶だけで書いていますが、訴因が不特定な起訴があった場合に時効停止を肯定した最高裁判例があったと思います。その事件では、訴因不特定とは言え、一応、起訴がありましたが、上記の件では、検察官が罪数の判断を誤り、本来、起訴すべきところを訴因変更してしまい、裁判所もそれを見逃して(おそらく、そうでしょう)訴因変更を許可し、審理が長期化する中で、停止していなければ公訴時効期間が経過してしまった、という経緯があったようです。形式的に見れば、不適法な訴因変更で時効が停止するのか?という疑問が生じますが、そこを、最高裁は、

検察官において,訴因変更請求書を裁判所に提出することにより,その請求に係る特定の事実に対する訴追意思を表明したものとみられるから,その時点で刑訴法254条1項に準じて公訴時効の進行が停止すると解するのが相当である。

と判断していて、今後の実務への影響にも大きいものがあるのではないかと思います。
罪数について、調べてもわからない、ということは、ほとんどないはずですが、検察官が迷った場合は、訴因変更ではなく、より厳格な手続である起訴(追起訴)手続を行っておく、というの鉄則でしょう。そうしておけば、罪数判断に誤りがあるという判断が後日されても、一種の「大は小を兼ねる」ということで、訴因変更をやり直す必要はない、という取り扱いになるはずです(そういった趣旨の判例もあったと思います)。しかし、小は大を兼ねないので、起訴すべきところを訴因変更でやってしまうと、上記の件のような、ややこしい問題が生じてしまうことになります。
検察官が罪数の判断を誤り、また、裁判所もそれを見抜けないまま長期間が経過するというのは、いかにもみっともない話であり、奥村弁護士並みとまでは行かなくても、罪数については、やはり注意して見ておく必要がある、という教訓を含んだ判例ということも言えると思います。

追記:

コメント欄でご指摘があった(ご指摘ありがとうございます)判例が言う、「検察官の訴追意思が明らか」という点を、手続の選択を誤ったとはいえ訴因変更により検察官の訴追意思自体は明らかになっている以上、時効は停止したと考えるべきだ、というところへ推し進めたということでしょう。