裁判員裁判やり直し?判決直前に被害者死亡

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20111103-OYT1T00348.htm?from=tw

山形地裁で10月にあった傷害罪に問われた男の公判で、判決6日前に入院中の被害者が死亡し、地裁が「訴因変更の可能性がある」として、判決期日を延期する異例の事態となっていることが2日、関係者への取材でわかった。

裁判員裁判の導入前は、傷害致死罪に訴因変更されれば、裁判官らの更新手続きを経た後、「致死」にかかわる部分の立証などが行われるのが一般的だった。
しかし、裁判員に分かりやすく立証することが求められる裁判員裁判になれば、書面での引き継ぎは困難で、公判を最初からやり直す可能性もあるとみられる。
山形地裁総務課は「前例がない状況で、裁判官が今後、どのような形で判断をするのかは、全く分からない」としている。

以前に、ある方から、こういった事態が生じた場合はどういった取り扱いになるかという質問を受け、検討してみたことがあるのですが、訴因変更により裁判員裁判対象事件になった以上、その時点以降は、裁判員を選任し、裁判員を含めた合議体で審理を行う、ということにはならざるを得ないでしょう。
問題は、そうなってしまった場合の審理方法ですが、刑事訴訟法316条が、

地方裁判所において1人の裁判官のした訴訟手続は、被告事件が合議体で審判すべきものであつた場合にも、その効力を失わない。

としていることから、少なくとも同条は準用され、従前の手続の効力を維持した上で、更に審理を行う、ということになるのではないかと思います。
そうなると、審理の方法としては、刑事訴訟法315条が、ここでも少なくとも準用されて、公判手続を更新する、ということになると思います。更新の具体的方法は、刑事訴訟規則213条の2に定められていて、

公判手続を更新するには、次の例による。
一 裁判長は、まず、検察官に起訴状(起訴状訂正書又は訴因若しくは罰条を追加若しくは変更する書面を含む。)に基いて公訴事実の要旨を陳述させなければならない。但し、被告人及び弁護人に異議がないときは、その陳述の全部又は一部をさせないことができる。
二 裁判長は、前号の手続が終つた後、被告人及び弁護人に対し、被告事件について陳述する機会を与えなければならない。
三 更新前の公判期日における被告人若しくは被告人以外の者の供述を録取した書面又は更新前の公判期日における裁判所の検証の結果を記載した書面並びに更新前の公判期日において取り調べた書面又は物については、職権で証拠書類又は証拠物として取り調べなければならない。但し、裁判所は、証拠とすることができないと認める書面又は物及び証拠とするのを相当でないと認め且つ訴訟関係人が取り調べないことに異議のない書面又は物については、これを取り調べない旨の決定をしなければならない。
四 裁判長は、前号本文に掲げる書面又は物を取り調べる場合において訴訟関係人が同意したときは、その全部若しくは一部を朗読し又は示すことに代えて、相当と認める方法でこれを取り調べることができる。
五 裁判長は、取り調べた各個の証拠について訴訟関係人の意見及び弁解を聴かなければならない。

といった方法によりますが、裁判員が審理に加わっていることから、その点を十分考慮した更新手続を行う、ということになるのではないかと思います。訴因変更後の訴因に対する被告人、弁護人の認否によっては、期日間整理手続を行う必要が生じる可能性もあります。
今後、訴因変更が行われた場合に、具体的にどういった審理が行われることになるのか、注目されるところです。