東名あおり運転死亡事故 危険運転は無罪主張へ

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横浜地検が予備的訴因として加えた監禁致死傷罪については、断続的に車両が走行する道路上の状況など一部が監禁の定義に抵触するとしながらも、例外的なケースであることや実際の停車時間が2分程度だったことなどから、量刑について争う方針。

 刑事訴訟で、審判の対象を設定するのは検察官の権限とされ、犯罪事実を構成要件に当てはめて構成したものが「訴因」です。検察官は、訴因を変更、撤回することができるほか、主位的訴因に加えて、予備的訴因を追加することもできます。「主位的」「予備的」というのは、主位のほうを先に検討してください、それが駄目なら予備的のほうでよろしく、ということです。

検察官が予備的訴因を追加するのは、裁判所の心証が、主位的訴因について芳しくない、ということで、無罪になることを避けるために、それよりも落としたものを予備で追加するのが普通で、裁判所の微妙な言動で読み取ることもありますし、裁判所から事実上の示唆や勧告がある場合もあります(命令、も制度上はあり得ますが、公判前整理の段階では証拠調べに入っていませんからそこまではないでしょう)。

この事件については、以前、

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でコメントしたように、危険運転致死傷罪の成立には元々微妙さがあり、裁判所が公判前整理手続の中で一定の疑問を感じ、裁判員裁判開始後に予備的訴因の追加が行われて審理が混乱、停滞することを避けるとともに、予備的訴因を早期に追加させておくことで、被告人・弁護人にも反論、反証の機会を与えておくべきといった判断が背景にあるのではないかと推測されます。

証拠を見ていないので、あくまで印象ですが、監禁罪は、人を一定範囲に閉じ込めた状態にしてその自由を侵害することで成立する犯罪で、高速道路上で無理やり停車させて相手を路上に出すという一連行為は監禁罪に十分該当するように思われますし、そのような危険な監禁状態から発生した事故で相手が死傷すれば、監禁致死傷罪も十分成立するように思われます。

社会的に大きく注目された事件であり、また、この形態で危険運転致死傷罪の成立が肯定されれば、適用範囲が広がることになりますから、今後の公判を引き続き注視する必要性を感じます。「