「警部補暴言は暴行陵虐罪」大阪地裁、付審判請求は棄却

http://www.asahi.com/national/update/0223/OSK201102230045.html

大阪地裁の中川博之裁判長は23日、警部補は特別公務員暴行陵虐罪で処罰されるべきだとした男性側の付審判請求に対し、「脅迫の域を超えており、同罪が成立する」との判断を示した。一方で「暴言については脅迫罪で起訴されている」として請求を棄却する決定を出した。

今回の決定は、警部補の刑事責任を脅迫罪で問うた検察側の対応を事実上、批判するものといえる。

既に起訴されている事件(脅迫罪の訴因)は、特定の取調べの機会における被疑者に対する一体となった行為が問題とされたもので、一体となった行為全体が「同一の事件」(専門的には公訴事実の同一性がある、と言いますが)で、同一の事件を複数起訴すると、後からの起訴は棄却されてしまいます。
要するに、上記の決定で、大阪地裁は、先の脅迫罪の起訴は、特別公務員暴行陵虐罪によるべきものだ、と言っていることになり、実質的には付審判が認められたに等しいでしょう。
この決定は、既に審理が進められている脅迫罪の事件に、直ちには影響しませんが、脅迫罪の事件を審理している裁判官が、その事実を把握することは確実です。どういう訴因にするかは、検察官が決めるものですが、裁判所が、打診、勧告といった方法で、訴因変更を働きかけることはあり(脅迫罪→特別公務員暴行陵虐罪)、検察官に対し訴因変更命令を出す権限も裁判所は持っています。ただ、検察官が、敢えてそういった措置に従わないと頑張れば、裁判所が訴因を動かす権限はない、というのが判例、実務です。
もし、訴因変更命令まで出たにもかかわらず、検察官が従わない、あくまで脅迫罪に固執する、さらには、罰金求刑でお茶を濁そうとする、といったことが起きれば、検察庁は権力犯罪に対して毅然とした態度がとれないとして決定的に国民の信頼を失ってしまう可能性が高いのではないかと思います。
前田元検事らによる一連の事件が大阪冬の陣、本件は大阪夏の陣(判決が出るころには夏になっていそうですが)と位置付けられるような気がします。
大阪夏の陣で豊臣家が滅亡したような運命を、検察庁はたどってしまうのでしょうか。