「純情:梶原一騎正伝」

 

 巨人の星タイガーマスクあしたのジョー等々、梶原一騎原作の様々な漫画は、昭和の人々を惹きつけ熱狂させたものでした。私も、昭和の子供として、その中にいました。

その梶原一騎が、ある日、刑事事件で被疑者、被告人となり、その名声が失墜していった、それに対する驚きも、今でも思い起こされます。その真相は何であったのか、ずっと疑問を感じていたのですが、それに対する答えのようなものを、本書では提示しています。

著者は、長年、梶原一騎の周辺にいた人々に取材をしてきた成果を踏まえつつ、本書で梶原一騎の真実に迫ろうとしており、それはある程度成功しているように思います。ある程度、というのは、今なおわからない部分が少なくなく、未解明の部分が残っているからです。その意味では梶原一騎は謎の多い人物と言えるでしょう。

テレビアニメのタイガーマスクのエンディングで、主人公が焼け野原をさまよい歩くシーンが出てきます。あの風景は、梶原一騎が世に出る前に生きていた風景であり、そういう昭和というものが梶原一騎を生み出し作品群を生んだということを改めて感じました。