北海道・砂川の神社住民訴訟:神社「違憲」最高裁判決(要旨)

http://mainichi.jp/select/jiken/news/20100121ddm012040022000c.html

信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で相当とされる限度を超えて憲法89条に違反するか否かを判断するに当たっては宗教的施設の性格、土地が無償で施設の敷地として供されるに至った経緯、無償提供の態様、これらに対する一般人の評価等、諸般の事情を考慮し社会通念に照らして総合的に判断すべきものと解される。

従来、最高裁が採用していた目的効果基準は、その適用の仕方により政教分離原則を広くも狭くできる面があって、強い批判にさらされてきましたが、今回、最高裁が打ち出した基準も、「諸般の事情を考慮し社会通念に照らして総合的に判断」」という、その在り方によっては、政教分離を厳格に適用することも、骨抜きにすることもできて、基準としての有効性には疑問があるでしょう。そこは判例の済み重ねで、と最高裁は考えているのかもしれませんが、積み重ねられるまでの混乱を回避することは難しそうです。

追記(平成22年5月17日):

判例時報2070号21頁以下に掲載されていました。平成22年1月20日大法廷判決で、違憲と判断された、市有地を神社施設の敷地として無償で提供していた件と、同日付けで、神社施設の敷地として無償で提供していた市有地の譲与が違憲ではないとして上告棄却になった件の2件が掲載されています。
判例時報のコメントでは、

本判決は、政教分離原則の基本的な理解及び判断枠組みの基底的な部分については、従来の判例に基本的に変更は加えられていないとみるのが自然な理解であるように思われる。
(24頁)


と評価されていて、確かに判決文を見るとそういった趣旨のことが書いてありました。そうであっても、「諸般の事情を考慮し社会通念に照らして総合的に判断」という基準は、政教分離という憲法上の重要な原則を考える上では曖昧と言うしかなく、批判は免れないのではないかということを改めて感じました。