http://www.47news.jp/CN/200912/CN2009121001000876.html
最高裁第1小法廷は10日までに「精神鑑定意見の一部を採用した場合でも、責任能力の有無や程度については、裁判所が鑑定書中のほかの意見に拘束されず、総合的に判定できる」との初判断を示した。
専門家による医学的所見を参考にしても、有罪無罪や量刑に直結する責任能力の判断は裁判所が行うことを明示したもので、裁判員が難解な精神鑑定に向き合った場合にも指針となりそうだ。
この判断自体は、従来の責任能力に関する裁判所の判断枠組みを確認したものと言え、特に目新しさはないと思われますが、その一方で、最高裁は、先日、
「心神喪失」で有罪はダメ…「鑑定尊重を」最高裁初判断
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20080426#1209186504
という判断も示していて、鑑定は尊重すると言いつつも、時にはつまみ食い、いいとこ取り(?)して「総合判断」という、見方によっては独善的、恣意的、さらに言えば鑑定の意味を没却しかねない危険性といったものを、今後、実務上、どのように防止して行くかが問題ではないかという気がします。そういった独善性、恣意性、危険性は、裁判員裁判であるからと言って免責されるような性質のものでもないと思います。
追記1(平成22年5月9日):
昨日の法科大学院の講義(現代刑事法)で、上記の判例について触れました。平成21年12月8日付け第一小法廷決定です。
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20091217114453.pdf
追記2(平成22年5月17日):
判例時報2070号156頁以下に掲載されました。コメントが詳細で参考になります。
コメントでは、統合失調症の影響下における犯行につき、本決定が、判断要素として、「統合失調症による病的体験と犯行との関係、被告人の本来の人格傾向と犯行との関連性の程度等」をあげていることを、従来の実務における判断手法を基本的に是認したものと評価していることが注目されます。こういった点は、精神医学の世界からは異論もあるところでしょう。