「DNA確度低く、自白必須」 足利事件の地検内部資料

http://www.asahi.com/national/update/1018/TKY200910180279.html

朝日新聞が入手した内部資料は、一審公判中の92年3月に、宇都宮地検が上級庁あてに作成した捜査報告書。弁護側がDNA型鑑定の信用性に疑問をさしはさんで証拠採用に同意しなかったため、公判に鑑定人を呼んで証人尋問する直前の時期だった。
捜査報告書の中で、地検は菅家さんを逮捕・起訴する前の捜査の経過を記載。DNA型鑑定の結果が「確率としては1千人に1.244人」と低かったため、「ただちに被告人を検挙するには問題が残る」として、警察に「被告人を任意で調べて自供が得られた段階で逮捕するよう指示した」と書かれていた。

先日、季刊刑事弁護に掲載された拙稿の中でも少し触れましたが、警察から検察庁に対する、事件送致(送付)前の事前相談ということはよく行われていて、検察庁から上記のような指示をすることもよくあります。
問題であったのは、自白以外の証拠によっては立証が万全ではないという認識を、少なくとも検察庁は早くから持っていながら、自白に対する慎重な吟味をせず、任意性だけでなく、信用性にも数々の重大な疑問があったにもかかわらず、自白の存在を偏重し、冤罪を生んでしまったことでしょう。自白がいかに魅力的なものか、自白の魔力といったことも感じられるものがあります。
高検というと、従来は、他のポストへ転じる前の一時的な腰掛け場所であったり、他へ持って行けない無能な人間をプールしておく場所であったりと、今ひとつ存在意義、価値が感じられない面がありましたが、捜査経験が豊富で優秀な検事を配置しておき、この種の難事件には、事前相談の段階から地検の判断に積極的に関与しアドバイスする、といったことも、事案によっては必要かもしれないという印象を受けました。
誤りは十分避けられたし、避けられなければならなかった、ということでしょう。