裁判員制度、判断の重み 実刑か猶予か 出所後に立ちはだかる壁

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090524-00000592-san-soci

自由な生活を夢見て「塀」の外に出たにもかかわらず、目の前に立ちはだかる高い壁。更生という視点から考えると、実刑と執行猶予の差はあまりにも大きい。執行猶予を取り消されるのは毎年13〜15%。これに対し、受刑者が出所後5年間(平成14〜19年)に再び刑務所に入った累積率は46・1%。犯罪の種類もあり単純比較はできないが、再犯率は明らかに受刑者の方が高い。
にもかかわらず、これまで、裁判の場で「更生」は必ずしも重要な要素ではなかった。
大阪地裁判事の中川博之(54)は量刑判断の基準について、「行為の危険性、結果の重大性、動機など犯行に直接かかわる事情でだいたいの量刑が決まる。2次的に反省や弁償、周囲の協力などで増減させてきた」と説明する。

裁判官や検察官をやっていて、多数の刑事事件を継続的に扱っていると、一種の求刑感覚、量刑感覚といったことが次第に身についてきて、そういった感覚に基づいて担当する事件から諸事情を抽出、分析し、所属する組織内で蓄積したデータベースにアクセスして同種・類似ケースを参照することで、実刑か執行猶予か、刑期をどうするかといったことは導き出せるようになってくるものです。その際の事件の見方、量刑の在り方といったことについて、従来、主流であったのは、上記の記事中の引用した部分にある大阪地裁判事が述べるようなものと言って良いでしょう。
ただ、そういった、市場で商品を売買するような決め方で良いのか、もっと個別の事件の個性とか特殊性といったことに着目して、思い切って重く、あるいは軽くということもあってしかるべきではないか、そういった面にこそ素朴な国民感情を反映させるべきではないかという考え方もあって、そのような考え方も裁判員制度を支えているのではないかと思います。
そのような量刑の在り方については、地裁段階で裁判官や裁判員が評議しながら悩むだけでなく、その事件が控訴されて高裁で審理されることになった際、高裁裁判官から見て、同様の事件について、重いものから軽いものまで、量刑差がある事件が係属してしまうということでもあって、量刑不当を審査する上で、かなり悩ましいことになるのは確実でしょう。裁判員裁判で審理され判決が宣告された事件が、続々と高裁で審理されるようになるのは、来年以降になると思われますが、特に量刑の問題について、高裁がかなり難しい判断を迫られることになる可能性が高いのではないかと私は見ています。