毒物カレー事件:最高裁第3小法廷の判決理由(要旨)

http://mainichi.jp/select/jiken/news/20090422k0000m040143000c.html

被告が犯人であることは(1)カレーに混入されたものと組成上の特徴を同じくする亜ヒ酸が被告の自宅などから発見されている(2)被告の頭髪からも高濃度のヒ素が検出されており、その付着状況から被告が亜ヒ酸などを取り扱っていたと推認できる(3)被告のみがカレーの鍋に亜ヒ酸をひそかに混入する機会を有しており、被告が調理済みのカレーの鍋のふたを開けるなど不審な挙動をしていたことも目撃されている−−ことなどを総合することによって、合理的な疑いを差しはさむ余地のない程度に証明されていると認められる。

本件が有罪になった最大の決め手は、犯行に使用されたものがヒ素という特殊な薬物であり、しかも、使用されたヒ素について、被告人の自宅にあったものとの同一性が認定されたことでしょう。その点を中核として、他の様々な状況証拠を積み重ねることで有罪認定が導かれているものと思われますが、やはり、中核部分が、被告人の犯人性を認定する上で大きく影響したという印象を受けます。
状況証拠による認定が求められるケースの多くでは、そういった「核」となるものが存在しないことも少なくなく、そうすると、犯人性を認定するには微弱な個々の証拠をつなぎ合わせ、積み重ねることで、どこまで認定できるのかという問題に直面することになります。
その意味で、毒物カレー事件は、状況証拠による認定が問題になったものとしては、認定が比較的容易であったという評価も可能ですが、上記のような「核」となる証拠が存在しないパターンの場合、認定には困難が伴い、特に裁判員が加わったような場合は、認定にかなり難渋するということも起きてくるでしょう。