http://www.asahi.com/articles/ASH5W6W75H5WUHBI01J.html
判決は、会場の写真記者団席付近の防犯カメラの映像から、韓国メディアの写真記者がカメラを置いて席を外している間、男がカメラが置いてあった方に手を伸ばし、「黒い物」をカバンに入れる様子が確認できるとした。その後の捜査で、この男について日本水泳連盟関係者が冨田被告であることを認めたとした。
判決はまた、冨田被告が事件が起きたころにプールの写真記者団席に座っていたこと自体は認めていることや、カメラは冨田被告の宿舎にあった旅行用カバンから見つかったことを指摘。冨田被告がカメラを盗んだ事実は「十分に認めることができる」と結論づけた。
この事件、私は証拠を見ていませんし、有罪、無罪、どちらとも判断しかねるのですが、報道から、検察の証拠構造を推定してみると、
・カメラが盗まれる窃盗の被害があった(これは争いがない)
・競泳選手の宿舎にあった旅行カバン内から被害品が見つかった(これも争いがない)
・被害と被害品の発見は時間的にも場所的にも近接していた(これも争いはないでしょう)
という基本的な証拠構造があり、これにより、競泳選手の「犯人性」は一応推認されると言えるでしょう(日本でも、窃盗罪で「近接所持の理論」として語られることがあるものです)。
上記の記事での判示内容によると、競泳選手は被害当時にその付近にいたことも認定されているようで、そこも、競泳選手の犯人性を裏付けるもの、という見方はできそうです。
問題となるのは、こういった犯人性の推認を妨げる事情があるか、ということで、競泳選手の供述では、
見知らぬ男にカメラをカバンに入れられた
とのことでしたが、防犯カメラ映像では、それが競泳選手本人とまでは確定しがたかったようですが、上記の記事にあるように、競泳選手の供述のような状況はうかがわれなかったとのことで、犯人性の推認を妨げないとした裁判所の判断には合理性があるという見方が可能と感じられます。
それに加えて、捜査当時の自白状況なども加味しての有罪認定は、これが日本の裁判所での判決であってもあり得るものではないかと感じさせるものはあります。
あくまで印象ですので、有罪である、無罪であると断定するものではありません。