裁判員判決、死刑求刑に無罪=犯人と被告、同一性希薄―高齢夫婦殺害・鹿児島地裁

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101210-00000041-jij-soci

判決は現場となった被害者宅の状況について「室内のたんすに金品が残されており、強盗であったか疑問。被害者の顔を100回以上殴るなど、およそ強盗目的とはそぐわない」と指摘。凶器となった金属製スコップから被告の指紋やDNA型などが採取されていない点も不自然とした。所持金を使い果たしたことを動機とした検察側主張に関しても「重大犯罪に及ぶほど経済的に追い詰められていたとは言えない」と退けた。
被害者の部屋の整理たんすや網戸などから検出された被告の指紋や細胞片のDNA型鑑定については、「鑑定は信用できるが、被告が網戸を触った事実を推認できるにとどまる。指紋も被告がたんすに触れた後、別人がたんす周辺を物色した偶然の一致も否定できない」と認定。捜査段階での現場保存が不完全だった点にも触れ、「真相解明のための十分な捜査が尽くされたか疑問が残る」と捜査を批判した。
その上で、「犯人と被告の同一性について、検察側主張はもはや破綻している。この程度の状況証拠では犯罪事実を認定することはできない」と述べ、「刑事裁判の鉄則に照らし無罪にする」と結論付けた。 

別の記事で、上記記事よりもやや詳しめの要旨を読んだ程度なのですが、確かに、判決が指摘しているように、指紋、DNA鑑定の結果等は、かつて被告人がそこ(現場)に存在したことがあることを立証できても、「本件犯行時のその時」にそこに存在していたことを合理的な疑いなく立証するものではないでしょうね。判決がそこまで明言しているかどうかはわかりませんが、例えば、被告人が、本件犯行時以外に、窃盗目的で侵入した際に残った痕跡ということも考えられ、重要な証拠ではあるものの、過大視はできないでしょう。
そうすると、他の状況証拠も総合して犯人性が認定できなければならない、ということになりますが、強盗目的にしては暴行の程度が苛烈すぎるなど、そもそもの検察ストーリーに疑問が生じてしまっている上、他に目ぼしい状況証拠も存在しないようであり、これでは有罪判決は難しいのではないかという印象を、私は受けました。
最近の、刑事裁判における事実認定の厳格化の流れや、捜査機関に対し、次々と起きる冤罪ないしそれに近い事件や証拠ねつ造等により国民の厳しい目が向けられているといった事情も、この判決に影響を及ぼしている可能性が高いのではないか、とも思います。
今後、鹿児島地検が、この無罪判決に対し、控訴審での逆転を見込んで控訴できるかが大きく注目されます。