大阪・平野母子殺害、差し戻し審で刑務官に無罪…地裁判決

http://osaka.yomiuri.co.jp/e-news/20120315-OYO1T00634.htm?from=top

差し戻し審前の1・2審判決は、〈1〉現場マンション踊り場に設置されていた灰皿内の吸い殻に付着した唾液のDNA型が被告と一致した〈2〉事件当日、被告の車と同車種の目撃証言が現場周辺で複数ある――など検察側が主張する状況証拠を評価し、有罪認定した。
しかし最高裁判決は、吸い殻の変色具合から、「かなり以前に捨てられた可能性がある」と指摘。状況証拠での事実認定について、「被告が犯人でなければ説明できないような事実がなければ有罪にできない」との基準を示し、差し戻した。

上記の最高裁判決については、以前、

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20100430#1272582769

とコメントしたことがあり、私自身は、間接事実(状況証拠)による有罪認定について、「被告人が犯人でないとしたら合理的に説明できない(あるいは、少なくとも説明が極めて困難である)事実関係が含まれていることを要する。」とする最高裁の判断に疑問を感じているのですが、それはそれとして、上記の大阪地裁判決を見ると、無罪という判断が出るのは必然ではないかという印象を持ちました。元々の証拠構造が、記事にある吸い殻のDNA鑑定結果から被告人が犯行当時に現場付近にいたということを中核とするものでしたが、その核心的な証拠の証明力が、最高裁判決で指摘されているように崩れてしまい、差戻後にも検察官がさしたる立証をすることができなかったとのことであり、それ以外の状況証拠が、被告人の犯人性を推認するにはあまりにも遠く、薄弱なものである以上、犯人性を推認、認定することはできないでしょう。
間接事実、状況証拠からの推認といっても、刑事裁判としての、「合理的な疑いを入れる余地がない」という高いハードルを下げるものではなく、感覚、フィーリングで何となく有罪ではないか、といった曖昧、いい加減な立証を許容するものではない、ということを、捜査関係者は、改めて認識する必要があると思いますし、証拠収集に一層の慎重さ、努力が必要ということでもあるでしょう。問題となった吸い殻以外の吸い殻が、誤って廃棄されていたことが今日の判決で厳しく批判されていたことや、捜査段階で作成された、犯行当日に現場付近へ行ったことを認めた被告人の供述調書(警察作成)が、取調べの問題を厳しく指摘され、結局、証拠として許容されず排除されていることも、捜査機関は厳粛に受け止め今後の教訓とする必要があると思います。