http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn200809030031.html
ボツネタ経由で知りましたが、珍しいな、こういうことも起きるんだな、というのが第一印象ですね。
楢崎康英裁判長は山口地裁での公判前整理手続きについて、「殺意などの判断に必要な証拠まで排除され、審理が不十分だった」として、懲役18年とした一審判決を破棄、審理を同地裁に差し戻した。
必要な証拠を採用しなかったなどとして手続きの違法性を認定し、審理のやり直しを命じるのは極めて異例。
楢崎裁判長は、義理のめいへの殺人未遂事件で争点となった殺意について「顔のどこをどの程度包丁で切りつけたか不明」などと指摘。検察側が請求、弁護側も同意した写真撮影報告書や医師の調書などを地裁が採用しなかったことに疑問を呈した。
犯人性が争点となった義理のめいの夫原田輝男さん=当時(65)=の事件でも検察側が請求した複数の状況証拠を挙げ「調べるのが相当だった」と指摘した。
通常、検察官が請求し、弁護人が同意している証拠について、裁判所が敢えて採用しない、ということはないでしょう。もちろん、証拠採否の必要性については最終的に裁判所が判断すべきことではありますが、ベスト・エビデンス(最良証拠)ということをあまりにも追及しすぎると、本当に必要な証拠まで落ちてしまう恐れがあって、弁護人が同意しているような証拠については、明らかに不要と判断されるようなものを除き、一応、採用しておく、というのが健全な実務感覚ではないか、と思います。
公判前整理手続を主催した裁判所側の、一種のチョンボではないかと思いますが、裁判所のチョンボで欠陥を抱えたまま公判前整理手続が終了してしまえば、欠陥のある証拠構造を前提に裁判員が判断し、その結果が、そもそもの公判前整理手続の不備を理由に上訴審で破棄されるという、お粗末なことが起きてしまう、ということが、この事件で明らかになったということでしょう。