「テロルの昭和史」

 

本書では、昭和初期の、濱口雄幸首相暗殺事件から226事件までのテロ事件を取り上げていて、私自身、今までいろいろと読んできた各事件ではありましたが、叙述が平易でありわかりやすく、改めて日本の戦前期、特に昭和初期におけるテロということを考える上で参考になる内容でした。

昭和初期のテロの背景には、昭和恐慌後の国民生活の苦境があり、社会の矛盾や歪みといったことがあったと思います。それが、暴力をもってしても社会を急激に変革しようとする昭和維新運動を活発化させテロを生み、テロに対する国民の支持も生んだと言えるでしょう。第一次世界大戦後のドイツにおける国民生活の苦境がナチスヒトラーを生んだことに通じるものがあります。

そういった意味で、テロを続発させるような社会にならないためにはどうすべきかを、今後も我々は考えていかなければならないでしょう。