取り調べのメモなしは「違法」 最高裁決定より踏み込む

http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200806020086.html

最高裁は昨年12月、国家公安委員会規則の「犯罪捜査規範」に基づいて作成された警察官の備忘録(メモ)について「捜査関係の公文書にあたり、証拠開示の対象になる」との初判断を示した。今回の被告の弁護人は「最高裁決定を踏まえ、取り調べメモの作成義務を明確にした地裁決定は画期的」と評価する。

杉田裁判長は3月、メモがないことを理由に弁護側の請求を棄却した。しかし、決定の中で「供述が短期間に変転しているのに、取り調べのメモを一切作成しなかったのは犯罪捜査規範に明らかに反する」と批判。「警察官らに、取り調べの適正化を目指す姿勢があったのか、証人尋問の際に正確な証言をする心構えがあったのかすら疑念を抱かせる」と言及した。

上記のような意味で違法性を認定したということですが、この違法性が、直ちに、供述調書の任意性に疑いを抱かせ証拠能力を失わせるか、ということになると、そこまで言っているわけではなさそうですね。しかし、裁判所をして「警察官らに、取り調べの適正化を目指す姿勢があったのか、証人尋問の際に正確な証言をする心構えがあったのかすら疑念を抱かせる」という心証を抱かれてしまう、というのは、任意性の立証という意味では、かなり危機的状況であり、今後、裁判所におけるスタンダードな感覚がこのあたりで落ち着き始めると、メモがない、ということが、任意性に疑いがある、という方向に直結するような運用、ということも十分あり得ることではないかと思います
従来型の、密室で秘密裏に、あらゆる手段を講じて自白をもぎ取り、取調官の口先だけで取調べ状況を立証して行く、という手法は、裁判所からも見放されつつあり、完全に行き詰まりつつある、ということは言えるでしょう。