裁判員が自白調書の任意性を判断 最高裁研修所の研究結果判明

http://www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2007111102063483.html

骨子によると、まず裁判員裁判の基本的な考え方として(1)法廷での供述・証言に基づき審理する「口頭主義」を徹底する(2)審理時間を大幅に削減し、公判に立ち会うだけで必要な判断資料が得られるよう工夫する(3)裁判官室で供述調書などを読み込む従来の方法は採らない−などと指摘した。
続いて被告が捜査段階の自白を翻して起訴事実を否認し、捜査段階の自白調書は任意の供述か、取調官の強要によるものかが争われるケースに言及。これまでは取調官の尋問や被告人質問などが長く続き、裁判官が全供述調書を証拠採用した上で供述の変遷を検討して判断してきたが、裁判員裁判では「こうした手法は採り得ない」との見解を示した。
取調官の尋問について「供述経過を証言させ、任意性などの肯定判断を得ることは期待すべきでない。尋問も30分−1時間程度(主尋問)で終える場合に限る」とし、検察側に取り調べ時間、場所などのほか容疑者の体調も含めた経過一覧表の作成も求めている。
その上で自白調書の証拠採用に裁判員が同意する必要性を示し「捜査の実情に関する裁判官の理解を前提にすれば任意性を肯定してもよいケースでも、裁判員が確信する決め手がない場合(検察側は)任意性立証に失敗したと考えるべきだ」と付言した。

「供述経過を証言させ、任意性などの肯定判断を得ることは期待すべきでない」ということになると、常識的な意味での「任意」(刑事訴訟上の「任意」は常識的な意味では使われていないので)とは言えない取調べがあったと判断されれば、供述調書の取調べ請求が次々と却下されるということが起きる可能性が高いでしょう。正にその点を、上記の通り、「捜査の実情に関する裁判官の理解を前提にすれば任意性を肯定してもよいケースでも、裁判員が確信する決め手がない場合(検察側は)任意性立証に失敗したと考えるべきだ」と指摘しているものと思います。
この研究成果は、現行の捜査、特に被疑者取調べに対し、大きな変革を求めるものと言っても過言ではなく、その意味には極めて重いものがあります。
諸外国における取調べ改革(可視化など)を尻目に、改革を怠り従来の制度に安易に依存してきたツケが、ここに来て一気に噴出してきた、と言っても過言ではないと思います。