【鈴香被告】検察、弁護双方不満「訳分からぬ鑑定」…鑑定経過を質問へ

http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/071221/trl0712210858002-n1.htm

地裁が明らかにした鑑定書主文の要旨は(1)彩香ちゃんが橋から転落した後の健忘は認められる。時間的には短時間だが、質的には重篤心因性の健忘である(2)豪憲君を殺害し、死体を遺棄した際の責任能力が著しく損なわれていたとは判断しがたい−というものだった。
「今回の鑑定の結果については、裁判所、検察側、弁護側それぞれが驚いた。こんな訳の分からない鑑定は初めてだ」と捜査関係者の1人は話す。

この鑑定の信用性については、鑑定書も見ていないのでよくわかりませんが、刑事事件の精神鑑定で裁判所によって信用性が否定されている例を見ていると、被疑者、被告人の供述の評価を誤っている場合が多い、という印象があります。
医師が、「患者」から話を聞き診断、治療を行う、という場合、基本的に(例外はありますが)、患者は病気を治してもらいたいから来ている以上、説明に嘘はない、という前提で進められるはずです。また、通常はそれで問題なく、いちいち患者の話を疑っていたら診断も治療もできなくなってしまうでしょう。
しかし、刑事事件の精神鑑定の場合、鑑定対象は、そういった意味での患者ではなく、あくまで裁かれている、だからこそ鑑定の対象にもなっている人々であり、鑑定の結果が、自らの裁判結果に大きく影響することもわかっているわけです。そこに、嘘、誇張、隠ぺい等が入ってくることは確実で、鑑定する側としても、そのような前提の上で、慎重に話を聞き、鑑定を進めて行く必要があるでしょう。
この種の鑑定の際には、捜査段階で作成された供述調書も多数利用されるのが通常ですが、これは、「インタビュー結果」をそのまま記載したものではなく、そこには、取調官の思い込み、誘導、作為的な表現、また、供述者側の嘘、誇張等が様々な形で入り込んでいるものですから、やはり、慎重な評価が必要です。
このような、様々な問題点がある刑事事件の精神鑑定ですから、鑑定人に、それなりの経験があり問題点に対する理解もある、ということでないと、人選として適当か、ということにもなりかねないと思います。
これだけの特異重大事件で、被告人も、いろいろな意味で難しい人のようであり、鑑定人の人選として、上記の記事に出てくる医師が、果たして適当であったのか、という疑問も感じる面があります。
判決の中で、鑑定がどのような評価を受けることになるのか、注目されると思います。