県内も「鑑定留置」増加 裁判員裁判導入後

http://www.shinmai.co.jp/news/20120221/KT120215FTI090011000.html

元検事の落合洋司弁護士(東京)は、裁判官だけの裁判では数時間から数日で結果が出る簡易鑑定で済ますこともあったと指摘。「裁判員制度導入で、裁判員により丁寧な判断材料の提供が求められるようになったのが増えた一因」とする。
一方、鑑定結果を不服として弁護側が裁判所に鑑定を求めても退けられる例もある。小諸市の自宅で妻を殺害したとして殺人の罪に問われた被告(上告受理申し立て中)は認知症責任能力は無いと主張したが、検察側の求めで実施した鑑定で責任能力有りとされ、長野地裁裁判員裁判で懲役13年の実刑判決を言い渡された。弁護人は再度の鑑定を求めたが「公判前に行った」などとして認められなかったという。
この裁判で裁判員を務めた女性は判決後の会見で「弁護側の鑑定があった方が良かった」と指摘。同被告の一審の弁護人を務めた松葉謙三弁護士(北佐久郡軽井沢町)は「被告の権利を守るため、複数人の鑑定人で調べ、精度を担保するべきだ」としている。

簡易鑑定の場合、一件記録を検討した鑑定医による被疑者との面接や簡単な問診等により早く関係結果が出るメリットがあり、事件から近い時期に実施されることが多いため、従来の刑事裁判では評価、信用されることも少なくなかったと言えるでしょう。職業裁判官は、知識、経験に照らし、簡易鑑定のメリット、限界をわきまえていますから、うまく活用して役立てていた面はあったと思います。そこが、裁判員裁判の下では、一般人が裁判員になる以上、よりわかりやすい、丁寧なものとして、正式鑑定が求められるようになってきているのだろうと思います。
再鑑定を行うべきかどうかは、事件の内容によりケースバイケースですが、複数の鑑定があったほうが比較しつつ検討しやすいというメリットは確かにありますから、既に捜査段階で鑑定を実施していても、弁護人が再鑑定を求めた場合、その必要性は、安易に排除せず慎重に検討されるべきでしょう。