http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160112-00000045-mai-soci
最大の焦点は、女性の体内に残された精液のDNA型鑑定の結果だった。捜査段階で行われた鹿児島県警の鑑定は「精液は確認されたが抽出されたDNAが微量で型の鑑定はできなかった」との結果で、1審判決はこれを事実上、被告の精液と位置づけて有罪判決を導いた。
ところが、控訴審で行われた日本大学の押田茂實名誉教授(法医学)による再鑑定では、「簡単に」(押田名誉教授)DNAが抽出され、被告と異なる第三者の型と判明。しかも、女性が当日はいていたショートパンツから検出された第三者の型とも一致した。これを受け、高裁宮崎支部は昨年3月、被告を保釈した。
捜査段階の鑑定を担当した県警技術職員が数値などを書き留めたメモを廃棄したことが明らかになっている。
検察側は女性の胸の唾液のような付着物から被告のDNA型が検出されていることから「女性の証言に信用性はある」と反論していた。
控訴審で行われた上記の鑑定結果からは、姦淫行為に及んだのは被告人ではなく別人という推定が強く働くと言うべきでしょう。被害者の胸の付着物から被告人のDNA型が検出されたという結果が正しいと仮定しても、それは、被告人と被害者が接触する機会があったということを示すものであっても、控訴審で行われた鑑定結果を覆して被告人による姦淫行為を証明するものとは到底言えないのではないかと思います(あくまでも報じられている範囲での感想ですが)。
捜査段階での警察による鑑定結果がその後否定されて、という、冤罪事件にありがちな経過をたどっていることに問題を感じるものがありますが、
東住吉事件など相次ぐ冤罪にも反省なし! 警察が冤罪をさらに増やす「DNA鑑定独占」を画策中
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20151102#1446429824
で、
私が以前からプランとして考えているのは、現在の警察庁科学警察研究所のような機関を、警察から切り離した独立の組織とし、弁護人や被疑者、被告人からの(再審事件を含む)嘱託に基づく鑑定等を行う、という仕組みですね。そういった鑑定等は、単に被疑者や被告人の私利に資するだけ、というものではなく、正しい事実認定、正しい刑事裁判が行われるためには重要な機能を果たすもので、現状では自前で勝手にやれ、ということになってしまっていますが、かつての誤っている可能性がある鑑定等に、適切に光を当てて再検証するためにも、そういった、独立して公費で運営される機関が必要だと思います。
とコメントしたことを、やはり、実現へ向け動かないといけないのではないかと思います。上記の事件のように、被疑者が犯行を否認していてDNA鑑定が有罪、無罪の決め手になるような事件では、特にそうした独立、中立の機関で鑑定を行うようにして、必要に応じてその機関が外部の専門家に依頼、連動するような仕組みにしておけば、「捜査段階の鑑定を担当した県警技術職員が数値などを書き留めたメモを廃棄」といったことも避けられるでしょう。
こうした事件が、制度改革へと結びつけられ同様の誤りが避けられることに役立てられることを強く希望したいと思います。