ゴーン被告の弁護団「日産と裁判分離を」 公平性に懸念

ゴーン被告の弁護団「日産と裁判分離を」 公平性に懸念(朝日新聞デジタル) - Yahoo!ニュース

この事件では、ゴーン前会長と前代表取締役グレッグ・ケリー被告(62)、日産の3被告について、同じ裁判官3人が公判に向けた準備を進めている。弘中氏は、日産が捜査に協力していることから、「検察が作文した、前会長に不利な供述調書を証拠とすることに日産は確実に同意する」と指摘。「同じ裁判官では調書の情報をぬぐい去るのは不可能だ」として、公平な判断が期待できないと主張した。

この種の、同じ事件で複数の被告人がいる事件では、1通の起訴状に複数の被告人が記載されて起訴された後、第1回公判までは、同一の裁判体(東京地裁刑事1部とか)の裁判官(単独か合議、合議なら3名の裁判官)が担当するのが通例です。

第1回公判(2回目とか3回目になることもありますが)で、認否が認める、認めない(否認)と別れると、そこで公判手続が分離されるのが普通ですが、認めたほうでは、検察官請求証拠の大部分が被告人、弁護人の同意により取り調べられ、不同意にして争っている被告人の関係では取り調べにはならないものの、裁判官は、同意した被告人との関係で、事実上、供述調書等を読むことになり、そこで、不同意にした被告人との関係でも心証を取ってしまうのではないかという問題が生じることになります。

職業裁判官であれば特に、そこは切り分けて心証形成する、と説明されますが、人間ですから、よくできた供述調書を読んでしまえば、不同意にした被告人との関係で心証を切り分けられないのではないかと、弁護人からは批判が出ることが多いところです。弘中弁護士もそこを指摘しているものです。

本件では、日産は事実関係を認めているわけですから、この段階で分離して別の裁判体で審理することとするのも一計でしょう。

日産はあくまで「両罰規定」により刑事責任を負うもので(金融商品取引法)、個人である被告人が無罪になれば、法人である日産を有罪にする根拠が失われてしまうことになり(個人である被告人が有罪であるからこそ両罰規定を介することで法人である日産が有罪になる)、併合して審理するのが適当という面もあります。

その場合、方法としては、併合して審理しておいて、個人である被告人が不同意にしている書証は、法人である日産の関係では取調べ留保にしておき、証人尋問後に、保留にしている書証を取調べる、という方法もあるように思います。ただ、そうすると、日産は、否認している被告人の関係で公判に付き合う形になって、それは結構負担です。

なかなか悩ましいところという印象を受けます。