医師拘置不服の準抗告棄却=放火殺人調書漏えい事件−奈良地裁

http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2007101800397

近く、この件で取材を受けるということもあって、改めていろいろと考えていますが、現行の刑事法制の下で、告訴を受け、捜査機関が秘密漏示罪の嫌疑に基づいて捜査を行う、ということは、法が厳然として存在する以上、当然のことであり、そのこと自体を非難するのはおかしいでしょう。また、そういった容疑で捜査を進める中で、逮捕、勾留の必要が生じることも,あり得ることであり、そもそも逮捕、勾留すること自体がおかしい、という議論も、そのような議論の立て方自体がおかしいと思います。
検討すべきは、審判を受けた少年に関する情報公開を厳しく制限している現行少年法、社会の関心を集めた事件の審判において何が行われたかを知りたい、知らせたい、という、社会的な意味での要請に対し、明治時代にできた秘密漏示罪が、表現の自由と関係者のプライバシー、少年の健全育成といった要請との適切なバランスを取るという機能を果たしていないことを、今後、どのように改善すべきか、ということでしょう。そういった検討を行わないまま、単に、捜査機関を叩いても、何の解決にもならないのではないか、と思います。
成人の場合であっても、裁判が公開され事件の内容が具体的、詳細に明らかにされることにより、有形無形のダメージを受けます。少年だから、健全育成に必要だから、といった、昔からの金科玉条のような理由付けで、現在のように少年事件に関する情報公開を厳しく制限しているというあり方自体が、本当にそれで良いのか、という検討の対象になるべきではないかと思います。
出すべき情報は出す、プライバシーや健全育成のため出すべきでない情報は出さない、といったルールが、きちんと整備され、それに従った運用が行われれば、今回のような事態にはならずに済むはずで、あるべき制度、ルールについての議論が、この事件を契機に深まることを、私は期待したいと思っています。