村上ファンド保有の資金と「犯罪収益等」

この記事

「解説・村上ファンド疑惑とは?串田誠一弁護士に聞く」
http://news.livedoor.com/webapp/journal/cid__2035571/detail

や、昨日の日経朝刊(14版の4面)の「村上ファンド 不正利益30億円 投資家の出資金も追徴?」という記事を読んで、気になることが出てきました。あくまで可能性と言うことですから、本当に利害関係があって気になる人は、しがない弁護士のブログだけで判断するのではなく、きちんと相談料を支払って、専門の偉い弁護士等のアドバイスを受けて下さい。
組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」というものがあり、その中で、

第二条
(1項略)
2  この法律において「犯罪収益」とは、次に掲げる財産をいう。
一  財産上の不正な利益を得る目的で犯した別表に掲げる罪の犯罪行為(日本国外でした行為であって、当該行為が日本国内において行われたとしたならばこれらの罪に当たり、かつ、当該行為地の法令により罪に当たるものを含む。)により生じ、若しくは当該犯罪行為により得た財産又は当該犯罪行為の報酬として得た財産
(2号以下略)
3  この法律において「犯罪収益に由来する財産」とは、犯罪収益の果実として得た財産、犯罪収益の対価として得た財産、これらの財産の対価として得た財産その他犯罪収益の保有又は処分に基づき得た財産をいう。
4  この法律において「犯罪収益等」とは、犯罪収益、犯罪収益に由来する財産又はこれらの財産とこれらの財産以外の財産とが混和した財産をいう。
(5項以下略)
第十一条
情を知って、犯罪収益等を収受した者は、三年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。ただし、法令上の義務の履行として提供されたものを収受した者又は契約(債権者において相当の財産上の利益を提供すべきものに限る。)の時に当該契約に係る債務の履行が犯罪収益等によって行われることの情を知らないでした当該契約に係る債務の履行として提供されたものを収受した者は、この限りでない。

とあり、2条2項1号が言う「別表」を見ると、

十四 証券取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第百九十七条(虚偽有価証券届出書等の提出等)、第百九十八条第十九号(内部者取引)又は第二百条第十三号(損失補てんに係る利益の収受等)の罪

とあります。証券取引法198条第19号というのは、正に、今回、村上氏が問われようとしているものです。
昨日の日経朝刊の記事では、「村上ファンドへの出資者は、期間満了を迎えても払い戻しを受けた出資金と運用益を、再度出資し直して、資金がまだ同ファンド側にあるケースも多いという。」「とあり、出資者の中に、早期に出資金を回収しようとする動きがあることが紹介されていました。
そうすると、どういうことが起き得るか、ということになると、村上ファンド保有資産の中に、インサイダー取引で得た「犯罪収益」が存在し、保有状況によっては、他の財産と混和するなどして「犯罪収益等」になり、そういった資産について、「情を知って」返還を受けると、犯罪収益等収受罪が成立可能性がある、ということが言えると思います。断定的にそうなる、とは言いませんが、可能性ということは考慮、検討したほうがよいでしょう。
村上氏が利益取得目的を強く否定していたのも、上記の2条2項1号の「財産上の不正な利益を得る目的で犯した」という要件を強く意識していたせいかもしれません。やはり、頭が良い人なのでしょう。
ただ、証券取引法では、

第百九十八条の二
次に掲げる財産は、没収する。ただし、その取得の状況、損害賠償の履行の状況その他の事情に照らし、当該財産の全部又は一部を没収することが相当でないときは、これを没収しないことができる。
一  第百九十七条第一項第七号若しくは第二項又は前条第十九号の罪の犯罪行為により得た財産
二  前号に掲げる財産の対価として得た財産又は同号に掲げる財産がオプションその他の権利である場合における当該権利の行使により得た財産
2  前項の規定により財産を没収すべき場合において、これを没収することができないときは、その価額を犯人から追徴する。

とされていて、インサイダー取引を行うにあたり、利益取得目的なく行う、ということは極めて考えにくく、その場合の「利益」は、必要的な没収・追徴(例外もあり得ますが)の対象になるものですから、必然的に「不正な利益」ということになってくるでしょう。
村上ファンドへの出資者は、今後、資金の返還を受ける際には、上記のようなリスクを念頭においたほうが良さそうです。